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【連載】リーンITと働き方改革(第二回)

【第2回】リーンITによる生産性の向上

長時間労働による過労死が問題になる中、時間外労働の上限規制に関する法律の改正が議論されており、「働き方改革実行計画」の対応策の中には、「法改正による時間外労働の上限規制の導入」が示されています。しかし、残業を減らそうと言われても、簡単に実行できることではないと考える人が多いのではないでしょうか? 経営者にとっては生産が滞り、働く人にとっては減収につながることが懸念されるからです。

経営者と働く人双方にとってより良い状況を実現するためには、労働生産性を向上させなければなりません。

■ITの生産性と改善機会の特徴

ITの生産性は、人々の時間の使用効率に強く依存するという特徴があります。また、近年の先進的なシステム開発技法を採用して大幅に生産性を向上した組織がある一方で、旧態依然とした生産性に止まり、大きな改善機会を残したままの組織があるという特徴があります。

ITのサービスや製品は、人々の頭脳労働によって生み出されることから、ITの生産性を高めるためには、(製造業が、機械化や自働化によって生産性向上を果たしたこととは違い)人々の時間の使用効率を高めることが欠かせません。これを達成するためには、時間がどのように使用されているか実態を把握することから始める必要があります。

IT組織の生産性はどのようなものでしょうか? 下記は米国のPuppet社のレポートの要約ですが、IT分野には、生産性を改善する余地が大きい組織が多いことが分かります。

ハイパフォーマンス企業とローパフォ―マンス企業の生産性比較

1 デプロイ:200倍

2    リードタイム:2,555倍(速い)

3    インシデント回復:24倍(速い)

4    計画外作業と手直し:22%削減

5    新機能やコードに費やす時間:29%向上

報告趣旨要約:アジャイル開発やDevOpsを採用し、生産性を向上した世界の先進企業(ハイパフォーマンス企業)と、ローパフォーマンス企業とのIT生産性と派生効果を比較したレポートです。調査対象は世界中の企業25,000社とされています。(出典:米国Puppet社の「2016 State of DevOps Report」)

リーンITは、ソフトウェア開発だけでなく、ITのさまざまな分野を対象にしたリーンの考え方の応用で、ITの生産性向上のための手段を提供します。次に、リーンITがITの分野でどのように生産性を改善するか見ていきます。

■ITの生産要素としての時間を管理する

先に述べたように、ITにおける生産は、人々の頭脳労働によって生み出されるものであり、時間が主な生産要素です。したがって、ITの生産性向上は、時間をいかに効率よく使用するかに関係します。DevOpsは、IT組織におけるコラボレーションに焦点をあてた考え方で、開発とオペレーションが上流工程から協力して働き、後戻りを最小にすることによってムダな時間を削減し、ITサービスの早期リリースと品質向上を達成しようとするもので、その考え方は、リーンの原則に基づいています。

■ムダ

リーンITの生産性向上に関する考え方は、人々の活動について、お客様価値を創造しない時間をムダと捉え、これを最小化し、お客様価値を創造する時間を最大化するというものです。そのためリーンITでは、ITにおけるムダを明確にし、それを省くことを目指します。

■ムラとムリ

リーンITではさらにムラ(変動)とムリ(柔軟性の欠如)に焦点を当てます。

ムラは、価値の流れの処理量の大小、処理された結果のバラツキの2種類があります。

ムリは、お客様要求の増減や複雑さに対応する能力(知識やスキル)が満たされない、あるいは余ることを意味します。

ムラとムリは、リーンの原則であるフローを乱し、ムダを作る原因となります。リーンITでは、ムラ、ムリを以下のような方法によって削減します。

①   処理量の大小→平準化

顧客要求の量や複雑さの変動に対して、できるだけ均して対応しようとすることを「平準化」と呼びます。ソフトウェア開発では、アジャイル開発手法のエクストリーム・プログラミングで提唱される、お客様要求をユーザーストーリーに細分化し、優先度付けしてリリース計画を立てることなどが該当します。

②   結果のバラツキ→標準化

処理結果の出来映えのバラツキは、あらかじめ定められた方法で、定められた順番に作業する(標準化)ことで小さくできます。コーディング規約に従ったプログラミング、プロセスの標準化などが該当します。

③   ムリ→多能工化(「スタッフの知識とスキル」と「需要」をバランスさせる)

顧客要求の量や複雑さの変化に応じて処理能力を柔軟に対応できずに能力の不足や余剰を生む状態をムリ(柔軟性の欠如)と説明しましたが、解消策として多能工化があります。「需要を満たすための知識とスキル」と「スタッフが保有する知識とスキル」のギャップを明らかにし、それを埋める活動などが該当します。

■仕事の流れの現在の状況を分析し、将来の状況を示す「価値の流れ図」

リーンITは、ITがお客様に価値を届けるすべての局面に応用できます。それらの局面でムダ、ムラ、ムリを明確にする主要なツールとして「価値の流れ図(VSM : Value Stream Map)」があります。

「価値の流れ図」は、価値を付加する活動(プロセスまたはステップ)を明らかにし、活動ごとの、所要時間、付加価値時間、待ち時間を測定し、運用効率(Operational Efficiency)を明らかにします。同時に、ムダ、ムラ、ムリの現状と改善点を見える化し、改善後の様子(将来の状況)を知ることができます。

リーンITは、このようにムダ、ムラ、ムリを明らかにし、それを削減することによってITの生産性向上を実現します。

次回は、リーンITが働き甲斐を高めることと、それを実現するコミュニケーションと組織文化について説明します。

◆リーンITの詳細は下記をご覧ください

リーンIT:ただの流行か次 のレベルなのか?
【連載】リーンITと働き方改革(第一回)
【連載】リーンITと働き方改革(第三回)

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Lean
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